新しいタイプの小規模下水処理システム
フレーザー川河口部三角州の、ウェストハム島北端に位置するジョージ・C・ライフェル・バードサンクチュアリは、北アメリカ西海岸における渡り鳥の重要な飛来地である。
この野鳥保護区は非営利団体BC州水鳥協会(BCWS)によって運営されており、バンクーバーを含むBC州南西部地域の愛鳥家には、絶好の教育的かつレクリエーション的な機会を提供している。
しかし、近年サンクチュアリに訪れる人々の増加が動植物の生態変化に敏感なこの地域に圧迫を加えている。
例えば公共施設の使用増加はトイレの汚水問題に直結しており、既存の肥溜め方式では適正な処理がもはや難しく、自然環境や公共衛生に悪影響を及ぼす可能性が極めて高い。
BCWSは早急な対策が必要と判断し、PGL Organix社に運転とメンテナンスが簡単な下水処理システムを探す依頼をした。
PGL Organix社はサイトの様々な条件とあらゆる技術を検討し、Suimon Engineering Canada社のBioGreenを採用することとなった。

<サイトの現況>
ライフェルバードサンクチュアリは堤防によって分けられた湿地と沼地から成っており、水はけが悪く、洪水被害や湛水被害を受けやすい場所でもある。
訪れる人々が使用する施設には売店、レクチャーホール、公共トイレ、ピクニックエリアがあり、バードサンクチュアリへの来訪者の数は月や日によって変わる。
例えば白雁(スノーギース)が飛来する11月には来訪者が約15,000人とピークを示し、一方12月は1,500人にまで減少する。
加えて、週末は日に300〜2,000人と集中し、平日は50人以下と少ない。
<サイトに要求されている条件>
PGL Organix社はサイトの状態、周囲の水質、過去の利用者状況、水使用の記録等を検討し、ライフェルバードサンクチュアリの汚水処理に必要な条件をまとめた。
サイトの状態は水の浸透拡散が悪く、地下水面が高いというような理由から、もともと処理済の汚水を排水するには適さない土地だった。
さらに水洗に使用できる流量が制限されている事、排出先である沼は生態学的に重要である事等が排水に厳しい規制を要求し、これらの難題は汚水そのものの量と負荷量の両方を減らす対策を講じなければならなかった。
沼に流入する水の水質分析結果は、公共トイレ以外から入ってくるBOD、TSS、大腸菌などが高い値を示してる(枯れ葉や水鳥)。
流入水中の汚水による窒素が水質を悪くしており、窒素とアンモニアが増加すると低水位にいる魚に極めて悪い影響を及ぼす。
汚水処理システムはアンモニアを硝化でき富栄養を取り除けることが要求された。
PGL Organix社は汚水の流量変化と変動パターンを求めるため過去の利用者状況や水量計が示す記録を検討した。
水量計は利用者数と関連付けて正確な流量をアセスメントできるように公共トイレに設置した。
<施設の選択>
BCWSは最小限におさえた動力部分と省エネルギー、そして運転とメンテナンスが簡単なシステムを必要としていた。
Suimonによって提案されたBioGreenは、変動する流量と水頭の不足を解決する設計がなされており、コスト面においても申し分なかった。
サイトに必要とされるすべての要求項目を満たしていたのである。
まず、水洗量の少ないトイレに転換し流量を減少させる事で、総合コストと汚水処理施設のサイズの縮小を図った。
第一段階処理である沈殿と嫌気性消化は、大きな腐敗槽で行われる。
次に続く汚水処理のプロセスのために、なるべく有機物は分解され、処理されている事が望ましいので、この嫌気性消化プロセスで有機・沈殿物の量を減らすのである。
今回採用されたシステムの心臓部は第二段階処理であるこのBioGreenの工程である。
長い滞留時間をとる事、バクテリアの成長を支える広い表面積の接触材を使う事、そして機械的要素は最小限に押さえる事といった、伝統的な設計の特色を取り入れる事によって、大きく変化する汚水流入量にうまく対応している。
この生物処理のプロセスが安全で効果的であるという事は、約15年間日本で広く使われていた事で証明されている。
このシステムは数個の槽に汚水を通す事で処理の短絡を避けている。
最初の槽、腐敗槽で接触材に付着している嫌気性バクテリアが、調整槽から流れ出た汚水を嫌気処理(発酵)する。
次の槽ではバクテリアが有機的に汚水を処理する。
槽内部に注入された空気が汚水をばっ気し、生物膜の付着と栄養素摂取を助長しながらゆっくりした下方向への流れを作っている。
各層には第一槽への逆洗と沈殿物を戻すように設計がなされている。
最後の槽では、排水前に浮遊物を沈殿させる。
低流量状態の間、システム内の有機負荷を均等にするため、排水ポンプで前段階の槽へ一度処理された排水を定期的に再循環する。
BioGreenは概ねBODとTSSの除去を96%以上達成し、アンモニアを完全に硝化、全窒素も相当量減少させる。
また、病原菌除去においても効果を示してきた。
<マウンド排水/湿地での建設>
第二次処理に続いて汚水は砂地を利用しろ過され、最後には沼へ排水される。
建設前、本来の土壌は近接した湿地に向かって傾斜していたがそこに14mの気圧調節された排水システムが30cmの砂の基礎上に埋設され表土で覆われた。
マウンドには芝生・花の種がまかれ、湿地には植物が根づくように植栽された。
大きな木はそのまま維持された。
システムには2つのドージングポンプとエアコンプレッサーが使用され、安全性を重視して設計されている。
もしポンプやコンプレッサーが修理、メンテナンスまたは故障のために運転停止になっても、システムの作業能力には影響はない。
長期間の運転停止時でも、汚水は基本的に第一段階槽で処理される。
<審議会>
選ばれたシステムと設計工程はBCWSの委員に綿密に検討された。 PGL Organix社はSuimon提供による革新的解決策を全面的に支持した。
カナダ環境省(カナダ野生生物局)からバードサンクチュアリが土地を借用して以来、下水処理は連邦政府の規制に基づいて行われていた。
今回の小型汚水処理システムは本格的なCEAA(カナダ環境アセスメント法)の検討を必要としなかった。
しかし、連邦・州政府のガイドラインに沿うように、環境省と漁業海洋省から集中的な審査を受けた。
審査にはマウンド排水のような最終設計にいくつか重要な項目を加えた。
<建設とモニター>
システムは1996年9月に設置され、来訪者が集中する時期に間に合い、しかも予算内に押さえられた。
設置後PGL Organix社はシステムの効力を検証するために、モニタリングプログラムを開始した。
BioGreenシステムによる処理後のBOD、TSS、大腸菌除去率等が調査され、さらに全窒素、アンモニア、硝酸塩等がシステム内のみならず、湿地そして沼においてモニタリングされている。
このモニタリングは初めの2年間は年4回実施される事になっている。
運転が開始されてからわずか8週間めの1996年11月のピーク時の最初の調査結果は、このシステムが非常に良く効果を発揮している事を示している。
現在の排水内の硝酸塩とアンモニアの値は、システム内で硝化に必要なバクテリア群がゆっくり育っている事を示している。
<下水処理へ新たなアプローチ>
ライフェルバードサンクチュアリに設置されたBioGreenによりサイトの外観も良くなり、環境面も非常に良く改善されているという結果が出ている。
モニタリングでは流量調整や処理能力が、要求されるすべての規制に当てはまり、かつそれを上回る実績で効果を発揮している事が明らかに示されている。
このシステムは従来の小型汚水処理方法の革新的な進歩を象徴している。
これに似た技術を使った他のプロジェクトがBC州での新しい開発の機会を作り出している。
また、21世紀における汚水処理技術の最前線でこうした機会を得ながらBC州のエンジニアは活躍する事だろう。
(Journal of The Association of Professional Engineers and Geoscientists of BC /May,1997)
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